こんにちは。右田です。
今日は少し長くなります。
これまでミカン狩り、花摘み、買い物、研修、遊びに、
右田柑橘へご来園された方にはご存じの方もいると思います。
スタッフの中では、一番の古株であり、みかん利き犬で、パッと見、タヌキに見える事もあるマーくん。
本当の名前は、マークスといいます。
先日、マーくんは、本当の飼い主のいる天国へと旅立ちました。
これまで、たくさんの方々に、可愛がっていただいて、本当にありがとうございました。
マーくんに代わって、心から御礼申し上げます。
突然のことですし、やっぱり気になる方もおられると思ったのと、
なにより私自身が忘れないために。
ほんの少しだけ。書かせてください。
先日の、大雨の日の早朝。
家の周りで少し土砂が崩れていました。
散歩に行こうとして、離れでマーくんを見つけた母は大慌てで私を呼びました。
私が母屋を飛び出して、指示を出しながら急いで駆けつけている時、声が聞こえたのでしょう。
きゃん、くーん、と力なく鳴き、
私が駆けつけてすぐ、意識を失いました。
救出した時には、もう、
ぐったりと、していました。
そんなマーくんを抱えて、無我夢中で私は走りました。安全な場所へ移動し、心臓マッサージを試みましたが、
ついにかえってはきませんでした。
小雨が降っていました。
今から15年も前、マーくんが右田家にやってきた日も雨でした。
その日、生前の父はトラックで畑に向かう途中、急に雨が降ってきたので、引き返して帰宅する途中でした。
突然、道のわきから子犬が飛び出してきて、
急ブレーキをかけたものの、
「轢いてしまった」
そう思ったそうです。
トラックを降り、車体の下を覗いてみると、
雨でずぶ濡れになった子犬が震えていました。
それがマーくんでした。
だから、マーくんは雨が大嫌いでした。
「運命的な出会いだった」と、父は後に振り返っていましたが、
連れ帰り、右田家の一員になったものの、父はそれから4年後に他界、犬にとって飼い主に先立たれる以上の不幸はありません。
この4年間が、きっとマーくんにとって、一番幸せな時間だったんだと思います。
そしてずっと、寂しかったことでしょう。
そんなマーくんは、寂しさからか、人に撫でられる、かまってもらうのが大好きでした。
誰にでも、愛想をふりまき、しっぽをフリフリ。いつの間にか人気者になっていました。
好きな食べ物は焼き立てトースト。
みかん利き犬ということで、みかんは本当に完熟した美味しいものしか食べません。好きな品種は青島。
泳ぐのが得意で、父と釣りに行っていた頃は、釣り筏を延々と往復するので魚が逃げてしまうのだとか。
ドライブも大好き、特にトラックの助手席が眺めも良くて気持ち良さげです。
すぐ横で何か作業しているときも、
手が止まると、撫でろと催促してきます。
わがままなところが玉に瑕でした。
また、悪戯が過ぎて、私から大目玉を食らった時には、
まるでこの世の終わりのような雰囲気で、しっぽをたれ下げ、ヨボヨボした足取りでトボトボと端に向かって歩いているその姿に、
怒っていた私もさすがに、
「クス」っとなってしまい、許してあげようと名前を呼んだら、
それらがすべて演技だったかのように、すごい勢いで喜んで飛びついてくるようなお調子者でもありました。
そして、マーくんは度々、死にかけました。
家の車庫に近所のクルマが猛スピードで突っ込んで来たとき、
台風が来るというので、たまたま、寝床を車庫に移動していました。
突っ込んできたクルマが衝突した場所とマーくんの距離は50cmもありませんでした。九死に一生です。
また、あるクリスマスの夜のこと、
ストーブを使っていたので部屋の換気をしようと窓をあけたら、バシャバシャと音が聞こえます。
近くの水槽でイノシシでも落ちて溺れているのかな?と思い、見に行ってみたら、マーくんでした。
つないでいたワイヤーが切れてしまって、ウロウロしていたらしく、視力の悪くなっていたマーくんは誤って落ちてしまったようです。
動物が自力で上がれる水位ではないので、
あの時、換気がもう少し遅れていたら、水の音に気付かなかったら、
溺れていた可能性の方が大きかったと思います。
何度も何度も、父が守ってくれているのかなと、思っていました。
だからなおのこと、今回のことは、信じられない気持ちで、
あの時、もしああしていたら。と、考えないかというと、やっぱりそれは嘘になります。
正直、ここに書くかも悩みました。
でも、マーくんのことを忘れずに、
そして前に進むために切り替えて、
やっぱりマーくんを、可愛がってくれた皆さんには報告しなければと思い、書きました。
最後まで守ってあげられなかった、頼りない仮の飼い主でしたが、いつもそばにいてくれて、帰りを待ってくれていて、幸せでした。
天国で父には会えたかな?
もしかしたら、あちらでも、また雨が降ってるかもしれませんね。
マーくん、今までたくさんありがとう。
最後にもう一度、抱きしめてあげたかった。